迷いの森の仮面夫婦


宝石箱をひっくり返したようなラスベガスの夜
海鳳は私に何度も熱い口づけをして、壊れ物のように優しく扱ってくれた。
痛みの中に少しの快楽が混在していたのは、彼が触れる指先がどこまでも優しかったからだ。

「いいのっ……。大丈夫だから」

既に緊張はピークに達していたがそう強く念を押すと、彼がゆっくりと耳元に唇を充てる。
甘い吐息が耳を掠めて、びくりと身体が反応する。
ゆっくりと、優しく、一つになるのを感じたら、瞼に涙が滲んだ。

意識を手放さないように、彼の背中を強く抱きとめる。 大好きな人に抱かれる夢にまで見た瞬間、その一つ一つを忘れたくないのにぎゅっと瞼を閉じる。

行為が終わった後も、彼は私の身体を労わってくれた。そして私が初めてだった事も彼は酷く気にしていた様だ。

「本当に初めてが俺で良かったの?」

顔を見たら嘘がバレてしまいそうで、彼の胸にぎゅっと顔を沈めて言った。
海鳳は静かに私の髪の毛を撫でてくれている。