迷いの森の仮面夫婦


ホテル内にあった新鮮なシーフードのレストランにも、初めて行った本場のショーにもはしゃいで子供みたいだと海鳳に笑われた。  カジノをやってみたいけれど、怖くて入れなくってと言うと海鳳は連れて行ってくれて

ルールも全く分からない私に優しく教えてくれる。 結果は一万勝ちという微妙な感じになってしまったけれど、それさえ楽しかった。

何をしても「楽しい!」と繰り返す私を見て、まるで海鳳は子供を見るような優しい眼差しで私を見つめていた。

そして彼は’一晩中’と言った言葉を最後まで守ってくれた。

くたくたになるまで遊び、美味しい物を食べてお酒を飲んで
午前三時を回る頃、私は再び彼の泊っているホテルにやって来て、クイーンサイズのベッドの上で彼と抱き合っていた。

「っ…ん……」

「…大丈夫?」

ぎゅっと彼の背中に腕を回して、抱き着く。

きっと彼に抱かれたら泣いてしまう。 いつかそんな日が来たら、と何度も想像していたけれど、それ以上に鈍い痛みが身体を襲う。

海鳳は何度も私の頭を撫でて、長い黒髪に指を通していた。

「まさか、君が初めてだったなんて…
本当に無理をしなくていいんだ…。初めてを、こんな見ず知らずの男となんて…」