「本当に今から心配ね、いつまで経ってもうちのクリニックを継ぐ気もないんだから」

海鳳が実家の病院である早乙女クリニックを継ぐ気もなく、勤めるつもりもないのがご両親の目下の悩みの種らしい。

「けれど、私は自分の信念を持って幕原病院で働く海鳳を尊敬していますので」

真っ直ぐな瞳で彼女へとそう言ったら、まとめられた髪の頭の片方を押さえて小さなため息を吐く。
その義理母の腕を握り締めてはつらつとした笑顔を見せたのは、海鳳の姉である凪咲さんである。

「そうよ、お母さん心配ないわよ。
早乙女クリニックなら私に任せて頂戴よ」

「まあ、凪咲ったら!お母さんはあなたの方こそ心配なのよ?
海鳳もちっとも結婚する気がなかったみたいでお母さん頭を悩ませていたけれど、あなただって海鳳と同じ三十三歳なんですからね?」

「お母さんったら、こんなめでたい席でそんな事言わなくたっていいじゃないの。
…雪穂ちゃん、本当に綺麗。
こんなに可愛らしい妹が出来るなんて、嬉しいわ。
海鳳の面倒は大変だと思うけど、よろしくね?」