迷いの森の仮面夫婦


「すごっ!本当にすごい!これテレビで観た事があるっ
うわあー綺麗だなあ…!」

窓に手を充てながらはしゃぐ私を見て海鳳が再びくすりと笑う。 ハッとして思わず我に返る。

ついついはしゃぎすぎたか。勿論異国の地で海鳳に出会えた運命が一番嬉しかったけれど、こんなに素敵なホテルの最上階もそこから見える水上ショーも初めてで感動した。

「とりあえず観光するならば、ガイドはつけるべきですよ。 夜は、特にね」

さらさらの茶色の髪は、いつもと違い上げておらず前髪にかかっている。
けれどその隙間から見えたチョコレートみたいな瞳はいつもの優し気なものと同じ。
彼を見上げながら、自然と口から出た言葉があった。

「では、ガイドしてくれませんか? 今夜、一晩中」

自分でも、中々に大胆な言葉を吐いたとは今になって思う。
後悔は全然していなかった。

彼は快く私の申し出をOKしてくれて、ラスベガスの夜の私の行きたい所全部に連れて行ってくれたのだ。