「慣れてますね?」
「一応日本では医者をやっていますから。」
「へぇ~そうなんですね~。じゃあ、今はご旅行中ですか?」
「仕事を兼ねての、観光みたいなものですよ。
あ、いつもこうやって女性を連れ込んでいるわけではないですから」
冗談めいた言い方をしながら笑い傷の治療を終えた海鳳は、「早乙女 海鳳と言います」と少し遅れて自分の自己紹介をした。
外国でも彼はちっとも変わらない。
困っている人が居れば放って置けなくって、優しい人だ。
「雪穂です。」
「雪穂さん?それにしても偶然ですね。
日本人は何人か見かけるけど、こんな風に出会うなんて。
それにしても英語もろくに喋れないのにアメリカの夜を一人で歩くのは危険ですよ。
せめてガイドはつけないと」
「すいません……」
ふと窓の外に目をやると、ちょうど噴水ショーが始まっていた。
ライトアップされた水面から、花火のように立ち上がる水しぶき。
そのダイナミックな迫力は、感動ものだ。



