ぐすんと涙がこみ上げそうになり、惨めな気持ちになって行く。 それでもラスベガスの夜は活気で溢れ、キラキラとした街並みに人々は笑顔で笑っていた。
「Do you need any help?」
端正な英語で声を掛けられ、びくりと肩を震わせる。 まさか…さっきの男が追いかけてきたのではないだろうか。
ゆっくりと顔を上げると、ふんわりとした茶色の髪がいつもと違って垂れ下がっている。 私服姿でも直ぐに分かる。
だから私は運命を信じたくなるんだ。 何度だってあなたに出会えたように、どんな異国の地に居たとしてもこうやって出会えてしまうから。
「助けて下さいっ…!ひっく。 外国人の男性に声を掛けられて、う…無理やりっどこかにっ…」
「ああ、やっぱり日本人だったのか。 大丈夫ですか?自分も日本人です。 落ち着いて下さい、ゆっくりと喋っていいから」
その場でしゃがみ込んで私の背中をゆっくりとさする海鳳は、ここでもお医者さんの顔をしていた。
「大変だ。膝を怪我しているね。 急いで手当をしないと。」
「あのっ…私、さっきどこかで財布を落としてしまって…ホテルに帰れないんです」



