「ちょ…一体何するの!」
そんなのお構いなしで強引に連れ出そうとする。
もしかしてこれってナンパ…?!適当にニコニコ相槌打っちゃってたから勘違いされた?!
目の前にはムキムキな筋肉の男、力では敵う筈がない。 ノーノーと何度も言っても彼は首を傾げるばかりで、私の腕を強引に引っ張る。
「本当に、止めてっ!」
力の限り男の腕を振り払い、急いで逃げた。 逃げる途中に転んでしまって膝が血だらけになってしまったが
人目につかないような路地裏に入って、取り合えず携帯を鞄の中から取り出そうとするとサーっと顔面が青ざめた。
バックの中に入っていた財布がない!
さっきの押し問答の末、道端に落としてしまったのかもしれない。
幸いな事に入れていたのはコインケースで、そんな大金でもない。 携帯も無事だし、パスポート類はホテルに置いてきていたのが幸いだ。
しかし自分の阿保さ加減に呆れ、血だらけの膝を抱えてその場にうずくまってしまう。
’本当に最悪!’
’やっぱり外国って怖い事ばかりだ’
’大体海鳳に会える確証だってなかったわけだし’
’一体私ここで何をしているんだろう…’



