占いの館に来る彼からはいつも仄かにアルコールの香りがした。
素面ではこんな場所に来れないのかもしれない。
私がここで知った海鳳の性格的に身近な人間には相談を出来ないタイプの人だ。だからこそ見ず知らずの得体のしれない女に話を聞いてもらうだけで心が軽くなるのだろう。
ましてや彼が愛する女性は、既に結婚している。傍から見れば道徳に外れた恋だ。
その日、海鳳が帰った後愛莉が痺れを切らしたように私に言った。
「こんな事いつまで続けるつもり?!
適当な事ばっかり言っちゃって!タロットカードの意味なんて一つも分かんないくせに、何が異国の地で運命的な出会いがあるよ!」
「……愛莉、決めた。 私もラスベガスに行く!」
「はぁ?!あんた英語出来ないでしょう?! 英語も出来ない上に女がアメリカに一人旅に行くなんて危険だよ?!」



