「彼女はずっと家族のように俺に寄り添ってくれた人で」
「心が優しくって、弱い人を放っておけない芯の強い女性で」
「本当は彼女の幸せを心から願っているけれど、どうしても自分の物にしたいって醜い気持ちが自分の中にあって」
私の知っている幕原病院での’早乙女先生’はいつも笑顔を絶やさずに患者にもスタッフにも親切な紳士的な人。
ルックスも性格もまるで王子様そのもの。
だけど自分を知らないと思っている赤の他人に見せる彼の本音の顔は…
意外に人間らしい。困ったり焦ったり、余裕を無くして見せて実は完璧な王子様じゃなかった。
私の知らない本当の海鳳、それを知っても幻滅をするどころか、そんな所さえ愛しかった。
その日も海鳳は愛莉に成りすました私アイリーンの占いの館に来ていて、桜子さんへの想いを吐き出していた。
「そういえば来月ラスベガスの方へ一週間ほど行くんですよ。 仕事も兼ねてですが、休日も少し取っていて。
昔、彼女の家族とうちの家族で一緒に行った思い出の地でもあるんですよ。少しだけ疲れてしまって、羽根を伸ばせればなって思ってます」



