シャワーを浴びた後、海鳳の淹れてくれた珈琲を飲みながら彼がシャワーを浴びるのをソファーの上で待っていた。

入籍を済ませても、結婚式を終えても未だに彼の妻になった実感はわかなかった。
新居を構え、一緒に暮らす。 穏やかで言い合いをする事もないどこまでも平穏な時間。

何気ない会話を交わし、大好きな笑顔を何度も私だけに見せてくれる。  これ以上、望む幸せはない。  これ以上欲張れば、今手に入れた全てを失うだろう。

結婚初夜、引っ越しを決めてから購入したダブルベッドの上で海鳳は愛しそうに私の髪を撫でた。

驚く事に、彼は女性を壊れ物のように優しく抱く。  これじゃあ、勘違いしてしまう女性の気持ちも分からなくもない。

「綺麗な髪……」

「っ……!」

何度も肌を合わせて、体温も息づかいも知っている。
時間をかけて私の身体をゆっくりと解していって、互いの息が上がっていくのが分かった。

海鳳が私の腰を持ち上げよとした瞬間、儀式のように自ら後ろを向く。
約束をしたわけでもないけれど、暗黙のルールといったように行為中は互いに声を余り出さない。