迷いの森の仮面夫婦


そんな話をしていると、頼んでいたランチプレートが届く。
私がハンバーグランチで、凪咲さんが魚介のパスタだ。

早乙女クリニックで勤めだして、凪咲さんはよくランチにこのお店に連れてきてくれる。 和洋中なんでも揃っているそのカフェは、何を食べても美味しくっていつの間にか私の大のお気に入りになっていた。

「わぁー美味しそう! やっぱりパスタにすれば良かったかも」

「あらそ?じゃあ少しあげるわよ~」

「うれし~い!それにしても美味しそう。いただきま…  うっ……」

口を押えると、凪咲さんが慌てたように顔を上げた。

「どうしたの?!大丈夫?」

「ごめんなさい……なんか突然ご飯の匂い嗅いだら気持ち悪くなってきちゃって……
おかしいなぁ…変な物食べていないのに」

調子が悪いのは気のせいだと思うようにしていた。 
胃がむかむかするなぁと感じ始めたのは少し前の話だ。
きっと食べ過ぎだとか、生理が近いだとかそんな単純な理由だと思っていた。