迷いの森の仮面夫婦


海鳳の突然の申し出に思わず言葉を失い、彼を凝視してしまう。
それって!?
結婚当初、海鳳が私に言った言葉と同じじゃない?!

その時の二人の約束事は、互いに愛さない事と子供を作らない事だった。
自然に愛し合うようになった二人に、その約束はもう無効だと思ったが…

「や、約束事?!
またぁ?!」

思わず叫ぶと、海鳳はくすりと笑みを浮かべ
ぎゅっと手を強く握りしめる。

「一つ、子供を作る。 俺、雪穂に似た男の子と女の子二人ずつがいいな」

思いがけない提案に別の意味で言葉を失ってしまった。

「どう?」

「……っ。私に似るより絶対に海鳳に似た方がいいよっ。
男の子でも女の子でもっ!私に似たら何の取り柄もない子になっちゃう!
絶対に顔も性格も海鳳に似た方がいいんだからっ!」

ぎゅっと私を抱き寄せると、彼が声を上げて笑った。