迷いの森の仮面夫婦


振り返った先には、ダークネイビーのスクラブを着た長身の男性。

茶色の髪は顔が良く見えるように前髪がかきあげられている。  そこから見える顔立ちは、綺麗な卵型の輪郭をしていて大きすぎず小さすぎずの二重の瞳は髪の色と同様にチョコレートみたいな色のアーモンドアイだ。

鼻筋も通っており、程よくボリュームのある唇は艶っぽくどこか色気を感じさせる。

目と目が合った瞬間、彼は目を少しだけ細めてにっこりと笑った。 そこに浮かぶは清潔感のある白い歯と整えられた歯並び。

誰に言われなくとも、二十年ぶりに会ったとはいえ直ぐに気がついた。 彼が海鳳だと言う事に。

「今日は天気も良くて風が気持ちいいね」

太陽が射し込む窓を眩しそうに見つめ、彼がそう言った。  ぎゅっと拳でおさえつけた左胸は尋常じゃない程強く脈を打っている。

どこか懐かしい気持ち。 それは二十年前彼と初めて出会った時と同じ気持ちだった。

あの頃お城に見えていた場所が、病院に変わっただけ。 童話の中に出て来た金髪碧眼の王子様とは少し違ったけれど、あの日あなたと出会った日から私の目に映る王子様はあなたただ一人だった。