「初恋相手を間違えるのも笑えるけど」

「もぉ~…だって…あの時の凪咲さん、早乙女 海鳳って…海鳳の名前言ってたから
ついつい信じ込んじゃったよぉ…ああ、恥ずかしい。
こんなに好き好き言って、忘れられない初恋って自分でも信じ込んでたのに、まさかそれが海鳳ですらなかったなんて」

海鳳は腕を伸ばして私を立ち上がらせると、自分の方へと引き寄せる。

「始まりなんてどうだっていいんだ。
今、俺が雪穂と一緒に居たいと思うから」

耳元で甘い囁きがゆっくりと鼓膜を揺らしていく。 人目も気にせずに、ぎゅっと海鳳のお腹に抱き着く。

胸の中顔を上げると、目尻を下げて笑う彼がぎゅっと抱きしめ返す。  …温かい。いい匂い。

「苦しいよ、海鳳…」

「強く抱きしめていないと、また雪穂がどこかに行ってしまいそうで不安なんだ」