迷いの森の仮面夫婦


「雪穂、髪っ……」

「えへへ、切っちゃった…。 もう、海鳳の好きな黒髪ロングじゃなくなっちゃったよ…」

片手で自分の髪を梳くように流す。
胸の下まであった長い髪は、もう肩の上まで短くなっている。
傷みを気にして一度だって入れた事のないカラーまでいれた。

「いや…似合っているよ。 短い髪でも、雪穂に似合ってる」

「…やっぱり海鳳は優しいね。
今日も知っていながら、私の嘘に付き合ってくれたんだよね?

海鳳、本当にごめんなさい…。愛莉から聞いた通り、私ずっと海鳳の事騙していたの…。
幕原病院で出会った時…小さな時に出会った海鳳だって直ぐに気が付いたし、五年間もずっと片思いしてた。
海鳳が愛莉の占いの館に偶然来た時も、海鳳の口から桜子さんの事やラスベガスに行くって事も聞いて
だから初めから、この結婚は全部私が仕組んだ事だったの…。
だからっ…本当に…ごめんなさい…。私すっごく嘘つきなの、それに海鳳に信頼してもらえるような妻じゃなかった…」