来客用の椅子に腰をおろし、小さく息を吐く。
この怪しい店内に来るのも久しぶりだ。

相変わらず胡散臭い壁紙は見ているだけで運気が下がりそうだ。

だから占いなどあてにならない。  向き合った愛莉はタロットカードを差し出して「占いでもしてみない?」と言った。

いつかを思い出して、愛莉に笑いを掛けて一枚タロットを捲る。 テーブルに置かれたのは月の絵のカードだった。

「また同じカードじゃんー。私愛莉に言われた事覚えてるよ?
不安や憂鬱とか…。めっちゃ不吉な予感のするカードだった…。
新婚時代に現実逃避とか将来が見いだせないとか言われて、やっぱり占いなんてするもんじゃないって思った奴じゃん。

っていうか、確かに今愛莉の占い通りになってる!
やっぱり非科学的な物だけど、当たったりすんのかな…」

その場で頭を抱えると、愛莉はテーブルの上に出ているカードを再び指さした。