「西松さん…頼みがあります」

「え?」

「もう一度雪穂に会いたいんです」

西松さんの笑顔はゆっくりと揺れると
先程舌を出して、悪戯をしたような子供の顔をして笑った凪咲の話を思い出す。




――だからぁー…雪穂ちゃんが言ってたでしょう?
幼い頃に海鳳とうちの実家で会ったって。
覚えていない?中学に上がるまで海鳳と私の背丈は大した変わらなくって、よく洋服を取り変えっこして
あの日もお母さんがホームパーティーを開いて、私のピアノの発表を皆に聴かせるって張り切ってて私はそれが嫌で

――それって、つまり?
てゆーか、今思い出した。
皆の前でピアノを弾きたくないって我儘を言って、俺が凪咲の振りをしたのか