俺の胸の中、彼女は静かにすすり泣いた。
胸の中、顔を上げると大きな瞳から静かに涙が零れ落ちた。
そうやって彼女に見つめられると、間違っているのを知りながら拒否をする事が出来なかった。

そっと彼女の腕を離すと、赤く染まった瞳を瞬かせて俺を見つめる。

「桜子は、陸人さんと本音で話し合うべきだよ」

「でもだって……あの人の考えている事が分からない…。
私の事が好きじゃないなら離してくれればいいのに…
どうせ愛のない結婚ならば、離婚してくれたらいいのに…。 こんなのちっとも幸せじゃない」

「そんな事ないよ。陸人さんはきっと桜子を愛してるよ。 だから何かあった時に頼るのが俺じゃ駄目だ」

「だって海鳳、困ったらいつでも自分を頼ってくれていいって言ったじゃない。
この間も言ったけれど、私やっぱり海鳳と結婚すれば良かった…。」