クリーム色をしたフローリングの床が少しずつぼやけていく。
ぽたりと涙が落ちたら視界がクリアになって、自分がようやく泣いていた事に気が付いた。

ひと粒ふた粒と、フローリングに雨模様を作っていく。 海鳳の為に買っておいたクリスマスプレゼントをテーブルに置くと、その横に用意しておいた離婚届を並べる。

左手の薬指から指輪を取り、それを離婚届の上へと置く。


この家を出て行くと決めたのは数ヶ月前。それでも決心するのに数ヵ月かかってしまった。

あなたがくれた物はどんな物であっても私の宝物―それはずっと変わらない。  だけど、彼から受け取った全てを置いていく。

まるで初めから何もなかったかのように、まとめておいたキャリーケースを部屋から取り出して二人で過ごしたマンションを後にした。