海鳳の買ってくれた白いツリーに飾りつけをして、ケーキを新宿まで取りに行った。
チキンとオードブルを買ってきて、海鳳へのクリスマスプレゼントも用意した。 刻一刻と彼との別れが近づいてくる。
この日が来るまで、何度も迷った。 ついてしまった嘘を全て白状しようかとも思ったが、そんな度胸もなくひっそりと彼の前から姿を消す準備を進めていた。
’これ以上一緒に居たら、もう苦しくて耐えられない’ だから最後位は、笑って二人で過ごしたい。
その日は東京にまばらに雪が降った。
北海道生まれの私にとって、クリスマスに雪が降る光景なんて見慣れたものだったけれど
東京の交通網は雪ですぐに麻痺してしまう。 窓の外、はらりと空から舞い落ちる白い泡粒を見上げながら今までにあった事を思い返していた。
彼と初めてあった、真っ白なお城での出来事。 再び再会した病院の窓から流れていた夏の空気。 宝石箱みたいな異国の地、ラスベガスで運命的な一夜を過ごしたあの日の事を。
手に乗せると、体温であっという間に溶けていってしまう雪のように、儚い。



