「ふふ、全然そんな事ないんですけどちょっと事情があって病院は辞める事になったんです。
でも妊娠とかそういう事ではないので、暫くしたらお仕事には復帰するつもりですけどっ」
「そうなんか、雪穂ちゃんが来てくれなくなるとおじさん思うと寂しいなぁ…。
でも元気でなあ?俺がいう事じゃねぇかもしれないけど、体が元気ならなんとかなるってな」
矢沢さんは本当に残念そうな顔をして、そう言った。
この仕事をしていると日々、色々な人との出会いがある。
頑固な人がいれば、気難しい人も沢山いて、時には傷つけられる言葉を言われる時もあるけど、それを忘れるくらい何倍も「ありがとう」っていう嬉しい言葉を掛けられたりする。
帰り道、見慣れた商店街を通ると街中の人達が高塚先生に気軽に声を掛け、彼もまた優しくそれに応じていた。
「でも残念だな、成瀬さんが病院を辞めちゃうのは」
「私も色々と考えたんですけどね。」
「でも専業主婦っていうのも悪くないかもね。 早乙女先生も大変だからな」



