思い出した様に海鳳が笑う。 私はいつも何故か海鳳が本当に楽しそうに屈託なく笑う姿を見ると安心する。
優しく笑う顔が好き。 屈託なく無邪気な笑顔を見せるのも好き。たまに見せる大笑いは堪らなく好きだ。
でも……困った様に作り笑いする顔は、嫌い…。 私の本音を全部ぶちまけてしまえば、きっと海鳳は困った顔をしながらも笑うだろう。
「海鳳ってよく笑うよね?」
「え?よく笑うのは雪穂の方じゃないか?」
「そう?」
「もしも雪穂にとって俺がよく笑う人間に見えるなら、それは雪穂のお陰だ。
人は鏡っていうからね。
俺、君の笑っている顔好きだ」
「私も、海鳳にはいつも笑ってて欲しい」
どちらからともなく繋いだ手から、僅かな熱がうまれていく。
嘘だらけの私だったけれど、その言葉だけは嘘じゃなかったんだ。



