私の事が好きなのも、全部嘘だ。 結婚して幸せそうに見えるのも全てまやかしで、海鳳は自分を騙していて、私も嘘をついている。

それを知っているからいつも不安になる。  海鳳の優しさを手放しで喜べない。  疑う権利もないのに、いつも誰と一緒にいるのかって疑っている。

「海鳳は、私の事好きじゃありません…」

「…雪穂ちゃん?」

私は凪咲さんを含め、色々な人を騙しているのだ。

―――――

少しずつ終わりの音が聴こえていたのはいつからだったんだろう。
もしかしたらこの関係が始まった時から、既にこんな日が来る事を予感していたのかもしれない。

どんなに仕事が忙しくったって毎日帰って来てくれて、私の下らないお喋りに「面白いね」って言って付き合ってくれる。

私が喜んでくれるから、休日は沢山お出掛けしてくれて、何でもない日にサプライズのスイーツを買って来てくれる。

本当は得意じゃないくせに、イベント事を大切にしてくれて
嘘の夫婦だったのに、まるでその毎日は本物みたいにキラキラしていた。  だからそんな毎日がずっと続けばいいと願っていた。