「なんでもないよ」

「うっそだぁ~!絶対変だし~。言いたくない事ならいいけど、何かあったら私に言ってね。
何も出来ないけど、話を聞く事だけは出来るからね。」

「ありがとう……。本当に頼もしいな、雪穂が居てくれて良かった…いつも助けられてるよ」

心から言ったつもりだったのに、また雪穂は困ったように切ない笑顔を揺らす。

「またまた~、海鳳に助けられてるのは私の方だもんっ!」

医者の妻になりたいだとか、裕福な暮らしがしたいと結婚前いつも言っていた。
自分は強欲な人間だから、欲しい物が沢山あると言って
けれど結婚してもちっとも彼女が自分の為に何かを買ったり、お金を使う素振りは見せない。

それどころか、いつも何かをする時は俺の為だった。 優先的に俺の事を考えてくれる人だった。

絶え間ない優しさに触れると、同時に切なくなる。   あんなに桜子が好きで、彼女以外好きになれなくて苦しかったのに。

そんな寂しさを埋めるために、結婚したのに
いつの間にかこんなにも愛しく雪穂を想う自分がいるのだ。