コンビニの袋を覗き込み、彼女は花の様な可憐な笑顔を見せた。
成瀬 雪穂と結婚して、もうすぐ五ヵ月。
結婚願望なんてちっともなかった自分が、彼女の逆プロポーズによってこうやって他人と共に過ごす事になるとは人生とは何が起こるか分からないものだ。
互いに愛し合って結婚したわけじゃない。 雪穂とは、運命的な出来事が何度も重なってこういう形になった。
そして、互いに忘れられない人がいるという同じ境遇の中結婚した。
飛びぬけて目立った所があるわけじゃない。 丸い顔と丸い瞳は癒し系で、性格はとても明るくていつも何事にも一生懸命だ。
そして流れるような黒いストレートの長い髪は、桜子とよく似ている。
彼女が同じ病院で介護福祉士として働いていたのは知っている。 事務的な挨拶や会話しかした事がなかったけれど、仕事にも一生懸命で患者さんや同僚からの評判は良い。
決して目立つ人ではなかった。 偶然ラスベガス旅行で出会って一夜を共にした日も、彼女が雪穂だとは気が付かなかった。
様ざまな顔を持っている人なのだと思う。 だから帰国した後の突然の逆プロポーズにも戸惑ったし、幼い頃に一度実家で会ったと彼女に聞かされても記憶には一切なかった。