幼い頃海鳳と会ったのはそれが最初で最後だった。
再び私達が巡り合ったのは、それから二十年後の話だ。
けれど心の片隅、ずっと海鳳の記憶はあった。 海鳳と出会った瞬間から、童話の中の全ての王子様は彼になった。
それ位衝撃的な出会いだった。 この世にあんなに美しい男の子がいるのか、と。
そうして私は二十歳までずっと北海道で過ごし、福祉科のある高校を卒業した。
三年間、普通の高校で習う勉強と共に福祉の専門教科を学び、老人ホームや障がい者施設に実習に行き高校を卒業する年に介護福祉士の国家試験を受けて、見事合格をした。
地元で二年間生活をして、二十歳になったのを機に家族の元を離れ上京した。
それまでに人並みに男性から告白をされた事もあったけれど、付き合う気にはなれなかった。
私が付き合いたいのも結婚したいのも、王子様ただ一人。
そして何歳になっても私の中の王子様は、あの日たった一度しか会っていない’早乙女 海鳳’だったのだ。
友人の西松 愛莉はそれを’初恋の呪い’と呼んだ。 一途とかそういう次元の話ではない。その尋常じゃない執着は異常だ、と毒まで吐かれる始末だ。



