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早乙女 海鳳――
幼い頃真っ白なお城に住んでいた王子様。
「将来はお姫様になるの」 口癖のように小さな頃ずっと言っていた。
そして、あの日たった一度だけ会ったに過ぎない彼の名前をずっと忘れられなかった。
「ママ、お城に王子様がいたの。 名前は’かいほう’って言うんだって」
「あら、雪穂…早乙女さんのお家で海鳳君にあったの?」
「うん。あのね、シンデレラにも白雪姫にも出てくる王子様全部が’かいほう’君なの。ママ知ってた?王子様の髪の毛と目の色は茶色なんだよ」
「そうなのー…凪咲ちゃんはピアノの発表をしてくれたけど、ママ海鳳君には会ってないのよぉ。そんなにかっこいい子だったの?」
「うん!王子様だったよ。 あのねっ…ママっ…!雪穂、かいほう君と結婚したいっ」
母は子供の戯言に穏やかな笑顔を見せて微笑んだ。
「そうね、また海鳳君に会えるといいわね。 王子様なんだ?ママも会いたいな」
そう言っていたのに、それから数ヵ月後父の仕事の都合で私達家族は北海道へと転勤になってしまった。



