迷いの森の仮面夫婦


「雪穂、写真撮影があるみたいだ、行こう」

「はい」

彼の手を取って、チャペルの下で写真撮影をする。
周りから見れば、私達は二人は今幸せの真っただ中なのだろう。

彼の柔らかな口調さえ幼きあの日と何一つ変わりはしない。慈悲深い優しい瞳で私や周りを見つめる癖も

けれど私は彼がたった一人、見つめている人を知っている。  それを思えば胸が苦しくなる日がある。

それでもあなたと共有出来る物ならば、悲しみでも痛みでも構わなかった。

あなたをこんなにも愛している――胸が張り裂けそうな程願い続けて欲しがっても、手に入れたように見せかけてもそれは全てまやかしだったりする。

どれだけ強く願っても、どうしても手に入らない物がこの世界にはあった。