薄い痕は指先が上を向いていて、濃い痕は耳の方に向かっている。

ジェームズにすぐ近くから見つめられてイザベラは後ろめたくなり、パッと顔を覆うと、首をうなだれてまた泣き始めた。

彼女が手で顔を隠すまで、ジェームズは事態をよく飲み込めていなかった。 しかし、手で顔が隠れた瞬間、薄いあざの痕がぴったりと手の平に重なったのだ。

この期に及んでジェームズもようやく悟った。

一方ニーナも、イザベラをひっぱたいたらだいぶ機嫌が良くなり、 すっかり魅了されているジェームズを相手に長々と説明し始めた。

「私が手を伸ばしてひっぱたいたとき、指先は後頭部まで届いていたわ。イザベラが自分でやると指はこめかみの方に向くのよ」

あっという間にイザベラの小細工は暴かれ、もはや誤魔化しようがなかった。

彼女は首をぶんぶん振って「違うもん、 私はそんなことしていないもん。ニーナがやったのよ、シーさん」と言って否定した。

しかし、ジェームズは「俺を利用する気だったんだな?」 と怒り任せに怒鳴った。馬鹿にされていたとわかるや否や、もう一発彼女の顔にお見舞いしてやりたい気持ちに駆られた。