午後 3時。

ニーナはまだ眠かったが、 六時にスクエア通り一番地でディナーパーティーがあるから来るようにという電話に答えていた。 彼女は迷うことなく同意した。 それどころか、待ちきれなかった。

離婚するための策を巡らせていたところに、ちょうどよくチャンスがやってきたのだから。

確かスクエア通り一番地はテラスハウスだった。 実際のところ、道沿いに住んでいるのはその家族だけなのでとても静かだ。

ニーナは無意識にバッグに触れた。

書いたばかりの離婚届が入っているのだ。

中庭に足を踏み入れるとすぐに、後ろで低い声がした。 彼女の義父だ。 彼はニーナの到着に微笑んだ。

サム・シーは六十代なので、ニーナは彼の息子がもう四十にはなっているだろうと思った。

ところが、彼はその年でまだ未婚で、妻を見つけるのに父親の世話になっているのだ。 おそらく、その男はよほど醜いかあるいは精神疾患なのだろう。

だとすれば離婚届を渡すのをためらうことはない。

「いや、よくきたね!」
サム・シーは白髪で、微笑むたびに顔のしわがはっきりと見えた。 彼は年をとっているようには見えたが、それでもかなり元気だった。

ニーナは頭を下げて彼に近づく。
「おじさん」

サムはその呼び方に眉をひそめた。ニーナは彼の義理の娘なのだ。 どうして赤の他人のようにおじさんなんて言うのだろう。

「そんなよそよそしい呼び方はやめなさい」
サムはやさしく諭した。

ニーナはぎこちなく笑う。

「君はわしの息子の妻なんだぞ。 おじさんなんてやめてくれ」

「私は近々あなたの義理の娘ではなくなります」

しかし、ニーナはそう言うのをためらった。 老人にショックを与えるのを恐れて言いたくなかったのだ。

しかし引き伸ばしてどうするのか?