時計は時を刻んでいるが、時間の進みがとても遅い。

長時間泣き喚いたせいでジェームズは声が枯れ、膝も固まり動けなくなりそうだ。

しかしそれでも、ジョンは押し黙ったまま何の反応も示さなかった。 それどころか機嫌を直す気配はなく、顔つきもさっきより陰惨になっている。一体、どうやったらジョンを宥められるだろう?

ジェームズは危ない目に遭いそうになるといつもうまく回避する方法を考えつくのだが、 今回もまた、不意に身を守る方法を思いついたようだ。

彼はさっと立ち上がると、堂々と突っ立ち、厳かにこう言った。
「ジョンおじさん、誰に殴られたんですか? 今すぐ仕返ししてきます。約束します。俺がその女を跪かせて、謝らせてやりますよ」

けれどもそう言い終えるとすぐに自分が言ったことを後悔した。 あまり良い保身の方法とは言えないからだ。

家族の誰もが、ジョンが自分の面子にことさら拘っているのを知っていた。 どんなに些細なことでも必ずツケを払わせようとするので、誰も彼を挑発したり恥ずかしめたりできなかったのだ。

ジョンは激しく嘲笑したが、 そのときの彼はまったくひどい顔をしていた。

彼がタバコを取り出すと、ジェームズは即座に自分のライターを引っ張り出し、敬意を示すためそのタバコに火をつけた。 ジョンはのんびりと煙を吐き出すが、彼の横顔はまだ重々しく凍りついたままだ。

これは嵐の前の静けさかもしれない!

このときジェームズは、自分がジョンの指の間に挟まれたタバコになったような気がしていた。 恐怖でお尻が燃え、煙で窒息死しそうなのだ。

「ジョンおじさん、お願いします...…」

ジョンは燃えるような瞳でむっつりとした表情を浮かべ「全部、詳しく説明してみろ。 フォーシーズンズガーデンホテルの女、それから今日の騒ぎは何だ」と言った。その言葉は簡潔で要点を突いており、たわごとなど聞くつもりがないということだ。

「はい」
ジェームズは再び素直に答え、心の中でほっと溜息を吐いた。