もちろんニーナもそこにいた。 彼女は廊下の端に立って、時々上がるイザベラのキンキン声を聞いていたのだ。

その叫び声はニーナの耳には音楽のようで、いつになく心地よかった。 曲名は「お灸を据えられるイザベラ」だ。

その時、ニーナの腕時計が急に光った。 スマートウォッチを一瞥して、アパートに戻るためタクシーに乗り込む。

テーブルについてからボタンを押すと点滅していた赤いランプが止まった。 次いで、別のボタンを押すとホログラフ画面が目の前に現れ、学校のフォーラムを映し出す。

彼女がフォーラムの内部オペレーティングシステムにログインすると、ファイアウォールが攻撃されているところだった。 大学のコンピュータサイエンス学部の天才の仕業に違いない。

けれでも、ニーナは全く気にしなかった。 それどころか、イザベラの写真についての書き込みを読み始めたが、それは彼女に対するコメントよりももっと悪意がこもっていた。

しかし、そんなに驚くことではない。 ニーナの場合、彼女を毛嫌いする人たちは、彼女の顔、美貌、あるいは夢中になっている男の数に嫉妬していた。

けれどもニーナ自身はいつも一人ぼっちで、反感を持っている人など勝手に怒らせておいて相手にしなかった。

しかし、イザベラは違っていた。 彼女は両親に甘やかされたせいで、いつだって傲慢でわがままだった。

周囲の人々にガミガミ言っては、みんな彼女の下僕であるかのように命令ばかりしていたのだ。 彼らのほとんどは怖がって、彼女に怒りを見せたことはなかった。

ところが今や、言いたい放題言って鬱憤を晴らす絶好のチャンスがやってきたのだ。 イザベラに傷つけられた人や嫉妬深い人はフォーラムで、ここぞとばかりに攻撃する。

ニーナは飽きてくるとコーヒーを一杯淹れに行き、ゆっくりと味わった。

システムにアクセスしようとするハッカーなどいないかのように時間をかけて。 突然、ファイアウォールのインターフェースが現れ、赤い警告ロゴが点滅する。 しかし、ニーナは心配するどころかニヤリと微笑む。