親身な忠告はいつだって無視されがちだ。 ジョンはがっかりしてニーナが消えた方向を見つめながら、悪巧みをしていた。

実は、ニーナに出くわすためにわざとこんな所にやって来たのだ。

それなのに、彼女は挨拶だけしてさっさと立ち去ってしまった。 それでジョンは怒っているのだ。

「待てよ!」
ジョンは冷たく威圧的な顔で、まだ遠くまで行っていないニーナに向かって叫んだ。 その厳しい口調はヘンリーを震え上がらせる。

ニーナは足を止めた。 なぜこの男はいつもあれこれ指図してくるのだろう?

「子供の頃、両親がとても厳しかったせいに違いない」と彼女は思った。

ニーナは馬鹿ではないので、必要以上に彼と話すつもりなどなかった。そして再び足早に遠ざかって行く。 不意に、背後から冷たい脅すような声がする。「後悔しても知らないぜ!」

「後悔?」 そんな単語はニーナの語彙にはなかった。

彼女はこっそり家出したときも、もし捕まれば、暗くて小さな部屋に閉じ込められて世間から隔離されてしまう可能性だってあったのに、まったく後悔などしなかった。

後ろの車はニーナに追いつくために加速し、通り過ぎてしまうと、今度はわざとゆっくり走り始めた。 ハンサムだが悪魔のようなその男は、満足そうに澄ました笑顔を彼女に向けている。

そして、携帯電話を指でつまんで窓から差し出して見せた。 挑発しているのか、さりげなく警告しているのか、意気揚々と電話を振りかざしている。

ニーナが目を凝らして見ると、それは録画だった。

車は動いていたが、録画された人物が自分に他ならないとはっきりわかった。

ニーナは固まり、急に寒気を感じた。

録画されたの!? 嘘でしょう?

ニーナは憤慨し、怒りと後悔でいっぱいだった。 そして拳を握りしめ、車に向かって空中で激しく振り回した。