「わかった。 連れていってあげる」

そう言うと、ニーナはイザベラの腕を掴んで交差点まで歩いて行く。 そしてタクシーを呼ぼうとしたとき、鋭い口笛が聞こえたので何気なく周囲を見回した。

「え?」

あいつだ! なんでこんな所にいるの? ニーナはびっくりした。

目の前にタクシーが止まると、 ニーナはひとまずイザベラを車に押し込む。 そして自分も乗り込もうとしたとき、ふと思いついた。

あいつがいるんだったら、話をしてこなきゃ。

「イザベラ、私、一緒に行けないの。 ちょっとやることがあって」
「彼女を中央病院に連れて行ってください」
ニーナは運転手にお願いした。 そして、なにを期待しているように、車のドアを閉めた。

その男との約束を思い出してニーナは満面の笑みを浮かべた。

「こんにちは、おじさん」
ニーナは彼に甘い笑顔を見せる。

その間ずっと、ジョンは彼女を近くで見つめていた。 ニーナがそんなに素早く反応するとは予想外だったが、ジョンは彼女と面と向かい合うと、一度目の再会をカウントダウンした。
「約束した後、初めて会ったね」

「そうね」
ニーナは熱っぽく答える。

しかし、なぜこの男はニーナと偶然再会して興奮しているのだろう?

とても奇妙だった。

「ありがとう、おじさん。 また会いましょう。 さようなら!」
ニーナにはまだ、イザベラを見舞いに病院に行くという仕事が残っていた。 なにしろ、最後まで親友の振りを演じ続けなければならないのだ。

さらに大切なのは、イザベラがどうして彼女を裏切ったのか、それを知る必要があった。

「何だって?もう行くのかよ?」
ジョンは少し苛ついた。

しかし、ニーナには彼が最後に言った言葉は聞こえていなかった。

ヘンリーは頷きながら「行っちゃいましたね」と言った。