ニーナはにっこりしながら髪をはらりと振り払うと、鹿の模様がついた小さな丸い鏡を取り出し、 自分が綺麗に見えるのを確かめた。

授業が終わると、ニーナはバッグを持ち上げ「あの女、ぶっとばしてやるわ」と自分に言い聞かせた。

一方、イザベラは場違いなハイヒールを履き、小さなバッグを持って、郊外の古い通りをニーナの言った通りに歩いていた。 周囲には傾いた木造の建物が少しあるだけで、しかもやかましかった。 人々は地元の訛りで話していたが、彼らの大声はイザベラの頭にがんがん響く。

ニーナは何でこんなひどい場所を選んだの? 時折、泥だらけに汚れた子供が走り寄ってきて、イザベラの顔をひどく青ざめさせた。

ひどい臭いだ!

けれども、彼女は臭いを避けるために鼻を覆ってせわしなく歩き続けた。

こんなぼろぼろの場所で食事をすることに慣れているのはニーナのような田舎者だけで、 イザベラの好みには安っぽ過ぎた。

でも、彼女は、ニーナが腕に刺青のある強面の男たちと一緒に角に隠れているとは、思いもよらなかった。

「あんたたちは、あいつの頭に袋をかぶせて殴っちゃって。 でも、殺しちゃだめよ。 ちゃんとやってくれたら、お金を払うわ」

「いいぜ」

男たちはうなずき、胸を軽くたたいた。

彼らの反応に満足したニーナはうなずいて、写真を撮るために携帯電話を取り出す。

素晴らしい見世物が始まろうとしているのだ。一瞬も見逃すわけにはいかない。