ニーナはイザベラの挨拶に応じなかった。 それどころか、彼女はお椀の中のお粥を無表情に見つめたままだ。

イザベラに思うところがあるのだ。

「乱暴された」ニーナはそう言って、イザベラの反応を伺った。

それを聞いたイザベラはいきなり立ち上がって叫ぶ。
「えっ? 大丈夫なの? 何されたの?」

混雑した食堂で、周りの声に負けないように、わざとの大声だった。

彼女の反応があまりに急で激しかったので、ニーナはほとんど固まってしまった。

イザベラはニーナの身体を調べ始めたが、男に乱暴されたような跡は見つからない。 彼女はどんよりした気分になり、失望以外感じられなかったが、落ち着きを失うまいと努める。

ニーナはイザベラを一瞥し微笑むだけだった。
「やり返してやったわ。 私カンフーやってるの、 知ってるでしょ?」

イザベラはほっとしたふりをして微笑んだ。
「ああ、なるほど!」

どういうこと? ニーナは何か隠しているんだろうか?

ニーナが紳士服を着てホテルから出て行くのを見たんだけどな……