しかしニーナは隣で少し緊張していた。 ヘレンに奥様と呼ばれるのは一向に構わないが、 ジョンが訂正しないのはどうもおかしい。 それどころか、彼は返事までしたのだ。

あの男は一体何を考えているのだろう?

ニーナはゆっくりとシーフードのお粥を口に運びながら、心の中では混乱してもがいていた。

「でも、棗のお粥は血液を元気にしてくれるから体力がつくんですよ。 奥様の健康に良いと思いますがね」 ヘレンは、ジョンが棗のお粥を自分で食べようとしているのを見て慌てて制止する。

シー様は 昨晩、 奥様を随分といたぶりなさったに違いない。 それなのに、今度は彼女のために作ってあげた棗のお粥を自分で食べようとしているんだ。 可哀想な 奥様! ヘレンは内心そう思っていた。

「血液を元気にして体力がつくだって?」 ジョンもニーナも二人とも混乱しきってヘレンを見上げる。

ヘレンは、もう何でもお見通しなのだから彼女の前で恥ずかしがる必要などないというかのように、優しげに微笑んだ。

「棗のお粥は奥様の健康に よろしいんです。 シー様は 別のお料理を召し上がればいいじゃないですか」 ヘレンはしたり顔でくるりと向きを変え、台所に入るや否やサムにメッセージを書いた。

テーブルに残された二人はぎこちなくお互いを見つめていたが、後ろめたいのかすぐにそっぽを向いてしまった。 二人はお互いちゃんと距離を保っていたとはいえ、ニーナはジョンの澄んだ瞳に映る自分の姿を見ることができ、そのせいでまた心臓が高鳴る。

この面映ゆいようなチクチクする感覚のせいで彼女はまた顔を赤らめ、 頰はチークを塗ったように色づいてさらに美しく見えた。

ニーナは本当におかしくなってしまいそうだった!

ジョンを見るだけで、なぜこんなにも顔が真っ赤になってしまうのか?

落ち着け、私! ニーナは自分にそう言い聞かせる。