ジョンはこれで彼女に対抗する術を手に入れたわけで、これからは 殴られそうになったら飲ませればよく、 文句を垂れてきたらキスで口を塞いでしまえばいいのだ。

「シー様、 あなたが仰った通りシーフードのお粥をお作りしましたよ。 それから、奥様、 こちらの棗のお粥は奥様のためにご用意しました」そう言うとヘレンはお椀を二つ二人の前に置き、 台所に残りの食べ物を取りに行った。

ニーナがまだ顔を火照らせたまま頭を擡げると、ミルクやパン、卵、ベーコン、色とりどりの果物などが並んでいるのが目に入ったが、 どれも本当に体に良さそうだ。

昨晩は夕食をとらなかったせいで彼女のお腹はペコペコで、 まずは棗のお粥から食べ始めた。

しかし、ジョンの方に目をやる勇気はなかった。 というのも、彼女の頭の中は今しがたの出来事でいっぱいで、ジョンがからかう声がまだ耳元で蠱惑的に響き続けていたからだ。

「ほら、シーフードのお粥食べろよ」ジョンがニーナの前にシーフードのお粥を押して寄越す。 ニーナはシーフードの方が好きだろうと思って、棗のお粥と交換したのだ。

その柔らかく微かに嗄れた声はとても魅力的に響き、彼女の中に何か根源的なものを呼び覚ましたような気がした。 それを聞くとニーナは唇を尖らせたが、 その声はさっき耳元で魅力的な言葉をつぶやいたのと似ていた。

「ありがとう」ニーナが頷く。 その微かな鼻声は柔らかく、どこか恥ずかしがっているようだ。

これを聞くとジョンは心臓が高鳴り、 手を伸ばしてニーナの頭にそっと触れる。 そのとき彼の目は愛情に満ちていた。

「シー様、 棗のお粥は奥様のために特別にお作りしたんですよ」 ヘレンはジョンが棗のお粥に手をつける前に忠告する。

ジョンはそのとき初めて、 ヘレンがニーナを奥様と読んでいることに気づき、 喜色満面になる。 そして、「いや、彼女はシーフードのお粥が好きなのさ」と説明した。