「髪を梳かせ!」 ジョンは真剣な表情でその考えを試す。

すると予想通り、ニーナは文句も言わずに素直に髪を梳かし、顔全体を露わにした。 彼女の顔には全く化粧っ気がなく、小さな口をちょっと尖らせ、 目を閉じたままぐったりとそこに座っているばかりだ。

「ほら、少し水を飲めよ」

ジョンがニーナの目の前に水のボトルを突き出すと彼女は抵抗もせずにそれを口にし、 飲み終えたときにはまだ水滴が唇に残っていた。

「びちょびちょじゃないか、口を拭けよ」

そうジョンが命令すると、ニーナは言う通りにする。

もはや、ニーナはジョンが言うことなら不服も唱えずに何でも従うのだろう。

ジョンは、彼女が酔っ払うとこんなに素直になり何でも言うことを聞くとわかると、どういう訳か嬉しくなった。

しばらくして、ジョンはニーナに「何でワインを飲み干したんだ?」と言って叱った。

今度は、ニーナもすぐには答えず、 むっつりと項垂れるとしばらく黙っていた。 やがて彼女の目に涙が溜まり、大きな雫が止めどなく滴り落ちる。

家族が恋しくなったのだ。

ニーナの両親はいつも彼女を叱りつけ、本人の意志など無視して様々なことをさせようと無理強いしたものだったが、ニーナにはそれが愛ゆえだとわかっていた。 彼らは愛情表現の仕方がわからなかっただけなのだ。

二人は、ニーナが実はとても脆く不安定で、愛情を込めて面倒を見てやる必要があることに気づかなかったばかりか、 娘が本当は二人の協力を切望しており、嫌なことは無理強いされたくないというのがわからなかった。

この苦難の間ずっと彼女を支えてくれた優しい兄がいなかったら、彼女は押し潰されて諦めてしまっていたことだろう。