ハニー、俺の隣に戻っておいで

誰かが深呼吸したが、 どうやら彼は状況を理解したようだ。 そして、ニーナの方を指差すと「シーさん、 あなた叔母さま、ニーナさんはそこですよ」と言った。

「分かった、どうもありがとう」 ジェームズが我に返って上を見上げると、目の前には驚くべき光景があった。

どういうことだ? ジョンおじさんがいるじゃないか。 それなら、何でニーナおばさんは俺まで呼びつけたんだ?

「あいつがおまえを呼び出したんだな?」 ジョンはイライラした様子で尋ね、ジェームズに氷のような視線を投げかけた。

なんと、ニーナはこの手に負えない悪ガキを呼び出していたのだ!

つまり、ジョンがいるにも関わらず、あえてジェームズに助けを求めたということだ!

ジェームズはジョンの声が怒りに震えるのを聞くと恐怖のあまり首をすくめ、唇をキュッと結び、 言い訳する気力すらなく泣き出しそうだった。

「えっ、 俺は来る場所を間違えたみたいだ……」

「ジェームズ、ちょっと待ってよ。 私を連れて行ってってば」ジェームズの声を聞いてニーナが頼み込む。 そして、頭をもたげて目を細めると残された力を振り絞って叫んだ。

彼女は、傍目にもわかるほどイライラしているジョンを突き放すとジェームズの方に向かってフラフラ歩き出し、 まっすぐ歩くことすらままならない様子でジェームズの肩にさりげなく腕を回すと、 彼を見つめながら無邪気に微笑んだ。

「ほら、行きましょう。 急いで。 まっすぐ家に連れて帰って。 死にそうなのよ。 まだ歩けるけれど、このままだと後で一人で歩けなくなっちゃうわ」

「ニーナおばさん、俺……」 俺だって送ってやりたさ。でもそんなことしたら叔父さんに殺されちまう。口には出せないが、ジェームズは内心そう思っていた。

「お願い、行かせて」