ハニー、俺の隣に戻っておいで

「シーさんが このプロジェクトに投資されるのでしたら、ここはお譲りして 懐の広いところをお目にかけましょうかね」 ジュ氏も初めは 投資を諦めるつもりがなかったが、それはプロジェクトに対する興味からではなく、美しい女性が手に入るかもしれないからだった。

普通なら、ジョンを満足させるためにプロジェクトや女性を諦めるのはどうという事もなかった。 しかし今回はニーナがかかっているので話が違う。

彼女がエンターテインメント業界にデビューすれば、何もせずとも大金を稼げるのは間違いない。 容姿だけで客が寄ってくるはずだ。 彼女を手に入れれば、ジュ氏は 個人的欲求を満たすだけでなく、ニーナを通してひと財産築くことができるのだ。

しかし、残念ながら、彼としても シー氏には敵わない。 けれどもシー氏は一体何がしたいのだろう?

ジョンを怒らせないように、ジュ氏は こっそりニヤリと笑ってニーナを叱るしかなかった。「何を待っているだね? ワインを飲んだら30億が手に入るんだぞ」

この叱責は、本当は、ニーナばかりか自分自身にも向けられていた。 ジュ氏にとって、女性と遊ぶためだけに30億払うなどということは狂気の沙汰だが、ジョンにとっては朝飯前だということを見せつけられてしまったのだ。 とすれば、ジョンが女性を連れ去るのを黙って見ているしかない。

突然、投資家の座はジュ氏から ジョンに渡り、ニーナは彼にサービスしなくてはいけなくなったというわけだ。 けれども、誰もがジョンを恐れる中、ニーナだけは例外だった。 リラックスしきっており、恐怖を少しも見せないのだ。