なんと30億である! それだけあれば最新設備を導入できるし、高給を出して才能ある専門家を雇うこともできるはずだ。 もちろん、手始めにアダムズと妻のコンビを解雇して別の研究者を雇うのだ。

ウィルソンはもう、アダムズがジュ氏を 怒らせようと一向に構わなかった。 投資さえしてくれれば、おべっかを使うのがこの男だ。 急いで立ち上がるとジョンに感謝の意を表す。

「おっと、感謝するのは時期尚早だぜ。 お嬢ちゃん、おまえも同意するかい?」 ジョンは、わざとニヤニヤを浮かべて目の前のグラスをおもむろに取り上げると、ニーナを見つめながらご満悦だった。

「お嬢ちゃん」という呼びかけはニーナに二人の出会い、それから一連の奇妙だが面白い出来事を思い出させた。

彼は最初から彼女のことをいつも「お嬢ちゃん」と呼んでいたのだ。

ジョンが手にしたグラスは、ニーナが彼と盃を挙げるかどうかに30億の投資がかかっていることを皆に示しているようだった。

「ルーさん、どうぞシーさんと乾杯してください」 ウィルソンはニーナの前のグラスを満たし、彼女に手渡しながらそう言った。

一方、ジュ氏は 狼狽えながら、ジョンもこの美人に興味を持っているのだと気づいた。

しかしわからないのは、ジョン自身がニーナに夢中なのだったら、なぜこのプロジェクトに投資するようわざわざ自分に頼んだのかということだ。 しかも彼は、ニーナがワインパーティーに参加することが投資の前提条件だとはっきり言っていたではないか。

ニーナはジュ氏の隣に腰を下ろしかけていたが、 ジョンが彼女を制止する。

俺をからかっているんだろうか? ジュ氏は疑問に思った。