「ジョンおじさん、ニーナおばさんに何かするつもりじゃないですよね?」 ジェームズは不安で声を震わせながら尋ねた。

「おまえはどう思う?」 ジョンは言い返したが、瞳には嫌悪感の気配がはっきり現れている。

ジェームズが己の知性を勉強に注ぎ込んでいたなら、彼の兄と義理の姉はジェームズの監督を彼に任せることはなかっただろう。

ジェームズにとって俄かには信じ難かったが、 今回、ジョンはニーナ本人に仕返ししようとしているのだ。

ジョンはもう十代の少年ではないのだが彼の行動は思春期の学生よりもさらにひどいものだったので、ジェームズは驚かずにはいられなかった。 女の子の注目を独り占めするために彼女のことを酷く苛めているというわけだ。

意地悪が過ぎる!

ジェームズにとってニーナは尊敬する叔母、先輩、そして友人だったので、彼女のために「ジョンおじさん、もう一度考え直しませんか?」と懇願しようとした。

ところがジョンは「おまえはあいつと仲がいいみたいだな」と言うと、ジェームズを威圧的な顔で睨みつけ始めた。 「あいつの弱みを教えろよ」

ジョンは微笑んでいるようにも見えたが、実際にはジェームズに白状するように無理強いしているのであり、望んだ答えを得るまではやめるつもりなどなさそうだ。 ジェームズは気味が悪くなった。 嘘をついて誤魔化そうものならきっと殴られ、その場で血が飛び散るのは間違いない。

「ジョンおじさん、お願いですからやめてください!」 ジェームズは苦し紛れに微笑みながら状況を好転させようと、緊張した口調ではあったものの冗談を言い、 同時に、ヘンリーの後ろに身を隠した。

(やっぱりこいつはニーナの弱みを握っているな)

ジョンでさえ彼女の弱点を知らなかったのだが、しかしジェームズは違っていた。 二人はかなり親密で、良い関係を築いているらしいのだ。

そう思っただけでジョンはさらに酷い気分になる。