「ジョンおじさん、ニーナおばさん」 ジェームズは笑顔で頭を下げお辞儀をしたものの、この重々しい雰囲気である。 ジョンに鋭く睨みつけられ、黙って突っ立っているほかないが、 自分の微かな表情を捉えて叱られるのではないかと気が気ではなかったので、顔を隠そうかと思うほどだった。

一方、ニーナは顔を下げ、何はともあれ女性トイレに急ぐ。 そして出て来た時にはもう普段の様子に戻っており、 堂々とテーブルに歩いて行った。

けれども、ジョンがテーブルに加わったのを目の当たりにすると、さすがの彼女も狼狽えた。 ジェームズとミシェルは隣同士に座って 小声で囁きながら、ジョンのためにもっと料理を注文すべきかどうかについて相談していた。

テーブルは大きかったが椅子は四つしかない。 ニーナはパニックになってしまった。 なぜなら、空いているのはジョンの隣だけで、そこに座るしかなさそうなのだ。

大丈夫、ジョンの隣に座ればいいわ。 他人の目があれば何もできないんだから。ニーナはそう自分に言い聞かせた。

ニーナ決心するとさっと座に着いた。 二人は並んで座っていたが、今回はどういうわけかジョンに負けていない気がした。

これまでは、彼の隣に並んで立つといつだって自分が頭一つ分背が低いので うんざりしていたものだが。 いくらニーナには気品があるとはいえ、ジョンに比べると自分の方が小さくて取るに足らない気がしていたのだ。

ジョンとニーナが一緒に座っているのを見ると、ジェームズとミシェルはメニューを上げて顔を隠し、ニヤニヤと微笑んだ。

まもなく、豪華なシーフードが運ばれて来た。 色、香り、味、どれを取っても素晴らしく、 キャビアをはじめ、ありとあらゆるシーフードが並んでいる。

「ベルーガキャビア?」 ミシェルは自分の目が信じられなかった。 何しろ、ベルーガキャビアは1キロあまりの瓶で350万円もするのだ。