ハニー、俺の隣に戻っておいで

ミシェルの悪戯っぽい顔に恍惚とした表情が浮かぶのを見てニーナは笑いを堪えられず、 キョロキョロと周りを見回した後、立ち上がってトイレに行った。

するとジェームズは目を細めレーダーのように周りを見回したが、 ジョンは見当たらない。ということは、彼の居場所は一つしかない。

トイレだ。

ジェームズは自分の機転に満足していた。 悪戯に関しては人一倍頭が働くのだ。 そしてミシェルに目配せすると、「ミシェル、ニーナに彼氏を見つけてあげたい?」と狡そうに笑った。

「彼氏?」 ミシェルは相変わらず鈍臭いので、ジェームズが何を仄めかしているのかしばらく分からない様子だったが、 ようやく理解すると夢中になって頷き、「もちろん! そうすればニーナも一人ぼっちじゃなくなるし、守ってもらえるわね」と言った。

そうすればミシェルが心配する必要もなくなり、万事が丸く収まるというものだ。

ジェームズは不穏な笑みを浮かべながらミシェルの手を握り、ニーナを追いかけ始めた。 「ほら、黙ってついて来い。 何も訊くなよ。 俺の言うことは聞くんだぞ」

ミシェルは、ジェームズが何を企んでいるのか分からなかったがぼんやりと同意した。 すぐに、二人はニーナに追いついた。

その時すでに、ニーナはトイレのドアの側を歩いていたが、 女性トイレのドアを開けようとすると、走って来る人の足音が聞こえ、それからジェームズの心配そうな声が聞こえてきた。

「待って! ミシェルがひどくお腹壊しちゃったんだ。 ミシェルに先に使わせてやってくれよ」 そう言うとジェームズは強引にミシェルを女性トイレに押し込む。

バン!

さらに彼は、ニーナに有無も言わせず、難なく男子トイレに押し込むと バタンとドアを閉めてしまった。