ジョンはどこへ行くにもヘンリーを連れているのだ。

ジェームズは立ち上がって顔の水を拭きとる。

そして、ヘンリーがこちらを見つめ返すのを見た。

ヘンリーはジェームズに頷いて合図すると後部座席にいるジョンの方に振り返る。 「シー社長、 ルーさんがジェームズさんとご一緒にいらっしゃいますよ。 ジェームズさんに見つかっちゃったみたいですが」

ジョンは眉を上げたが相変わらず疲れ果てた様子だ。 目は充血しており、どうやらあまり休んでいないのだろう。

彼は昨日ニーナをとんでもない場所に置き去りにしてしまったことを後悔していた。 それもタクシーどころか人っ子一人いないような場所だ。 ニーナのような美人が一人で歩いていたら、 悪い奴らの餌食にだってなりかねなかった。

実はあの後、ヘンリーに車を戻してニーナを家まで送るように言ったのだが、 さっきの場所までやって来た時、ジョンは彼女がタクシーに乗るのを見たのだった。

辺鄙な場所だというのに、どうしてこんな時間にタクシーがいたのだろう?

ニーナが乗ったタクシーが行ってしまうのを見るとジョンは頭がかっかとするのを感じ、 タクシー会社を買収して運転手を解雇してしまいたい衝動に駆られていた。

そしてようやく家に帰って眠りについたが、一晩中ゴロゴロと寝床で動き回った。

彼は、ニーナとの出会いやロマンチックな一夜、平手打ち、喧嘩、それから暴力のことを思い出して悶々としていたのだ。

しかも、猫なで声で「おじさん」と言われたばかりか、一度など「ハニー」と呼ばれたこともあったので、 彼女のことを考えているだけでドキドキしてしまう。

部屋はめちゃくちゃだった。 太陽が昇ると、床に散らばっているタバコの灰を照らし出される。 一睡もできなかったのは、彼にとってこれが初めてのことだ。