しかし、ニーナは眉をひそめた。 「なんで知っているのよ?」

ミシェルが答えようとしたちょうどその時、ジェームズが「もちろん、俺が教えたからさ」と割り込んで来た。

彼は二人に向かって眉を上げて合図すると隣に腰を下ろし、 テーブルの上にジュースのボトルがあるのを見つけるやパッと手に取り、まだ開いていないかったにも関わらず一口飲んだしまった。

そして今度は足を組み、「おばさん…… いや、先輩、チャン家のザマには満足ですか?」

彼は最初ニーナをおばさんで呼びかけたが、ニーナの瞳が厳しく咎めるのを見て呼び方を変えたのだ。

ニーナは不快感を隠しもせずジェームズを睨みつけていた。 またしてもニーナおばさんと言うなんて!昨日だってそうやって、死にそうな目に遭わせたじゃない。

「飲み物は自分で取りに行くこと」ニーナはそう言ってジェームズを叱ると、彼には目もくれずにジュースをさっと取り上げた。

「シーさん、 何でニニを先輩って呼んでいるの?ニニがひとつ学年が上だから?だったら私も先輩じゃない」ミシェルも自分のジュースを一口飲み、疑り深そうな黒い目を彼に向けて尋ねた。

「おまえは年下だろ。 何で先輩なんて言わなくちゃいけないんだ?でも、ニーナ先輩は違う。俺より年上だし、ともかく偉いのさ」ジェームズは昨夜暗がりで見てしまったのだ。ジョンがどんな風にニーナを連れ去ったのかを。

そして、逞しい男が美少女を運び去ったとしたら、 考えなくたって、その後何が起こるか想像できると言うものだ。

ヘンリーはやっぱり賢い男で、ニーナが遅かれ早かれジェームズの叔母になるだろうとちゃんと予想していたわけだ。