ジェームズは、ジョンがニーナといちゃつくやり方がまったく気に食わなかった。

とはいえ、ヘンリーが嘘をついていなかったことに気づいてわくわくしたのも事実だ。 ジョンは冷酷な男だが、ニーナに向かい合うと人が変わるのだ。

しかも、ジョンにニーナとの間の子供ができたら、彼を監視する暇はなくなるだろう。

ジェームズは、ストレスのない楽しい未来を確保するためなら何でもすることにした。 つまり、叔父の携帯電話をひったくってニーナに手渡したのだ。

「先輩、ほら!」 けれども事はそんなに単純ではなく、それどころか、ジェームズはこの行動で自分の身を危険に晒してしまっていた。

ニーナは携帯電話を受け取ると、まだ残っている暖かさに少し狼狽えたが、 手放しはしなかった。

携帯電話は手元にあるのだ、見ない理由はないだろう。

「ジェームズ・シー!」 ジョンはキンキンした声で叫び、瞳をメラメラさせて彼を睨みつけた。

ビリヤードルーム全体が沈黙する。 何が起きているのか誰もよく分かっていなかったが、ジェームズにとって良くないという事だけは明らかだ。

ジェームズは足をふらつかせながら、 「ニーナおばさん、助けて!」と呟いた。

部屋は再び不気味な沈黙に包まれ、 ニーナは凍りつく。「ニーナおばさん?」

ジョンが眉を顰める。 「ニーナおばさん?」

他の人たちも唖然としている。 「ニーナおばさん?」

ニーナは辺りを見回したが、他に女性は見当たらない。

では、ニーナおばさんというのは一体誰のことだ?

彼女はジェームズの目を覗き込みながら、信じられないという様子で「私のこと?」と尋ねた。

「そう」 ジェームズは頷き、「さっきジョンが、妻以外に携帯電話のチェックなんかさせないと言っただろ?」と答える。

そして、ニーナに目配せすると、手元の携帯電話を見るように仄めかした。

彼女は「え、私に携帯よこしたの?」と 聞く。

「手元にあるだろ?」 ジェームズはそう答えた。