「俺がその気になれば、なんだって必ず見つけ出すのさ。 御託はいいから本題に入ろう。ジョンおじさんを探してるんだろ?今すぐ連れて行ってやるから急げ」と言ってニーナを掴もうとしたが、いとも簡単に躱されてしまう。

ジェームズは男友達を引っ張り回すことに慣れきっていたせいで、ニーナが丁重に扱われるべき女の子であることを全く忘れてしまっていたのだ。

そこで礼儀正しく一歩踏み出し、紳士的な招待の身振りをして見せた。
「先輩、一緒に来てくれよ」

「ジョンはどこなの?」
ニーナは警戒していた。お互いよく知り合っているわけでもないのに、どうしてジェームズは彼女をジョンに引き合せようと熱心になっているのだろうか?

「つべこべ言わずに、ついて来いよ」

ジェームズはそう命令するとニーナを高級クラブに連れて行った。 道すがら彼はニーナにちやほやお世辞を言い続けていた。そして服を買う必要はあるか、それとも何かお菓子をつまみたいか尋ねた。

(ただより高い物はない。 何か企んでいるに違いないわ)
ニーナはそう思った。

「ねえ、ジェームズ、私にどうして欲しいわけ?」
彼が普段とはだいぶ違う振る舞いをするので、ニーナは少し緊張しているのだ。

「違うって! 誤解するなよ。別に悪いこと考えているわけじゃないさ。信じてくれよ。傷つけたりするわけないじゃないか」
ジェームズは恭しく手を挙げると、嘘偽りなくそう誓った。

実際、彼がニーナに対してとても気さくで親切に振る舞ったのは、単にヘンリーからみずみずしい噂を聞いたからに過ぎなかった。

ジェームズは結局、ジョン叔父さんに思っていたほど重視されていないという事実を沈鬱な気分で受け入れざるを得なかった。