そして、「アンチする時間を持て余しているなら、公衆トイレでもピカピカになるまで舐めていればいいのだ」と考えながら、怒り任せに書類を引き裂き、ゴミ箱に鮮やかに投げ入れるとテーブルを指でそっと叩いた。

そして、視線を上げ「イザベラにいいように利用されかけたんだな?」と聞き返した。

「はい、そうです」
ジェームズは胸を軽くたたいて真剣そうに答え、本当だと誓った。 イザベラは彼を利用しようとしたのだ。もし賢いニーナが機転を利かせていなかったら、簡単に虚仮にされるところだった。

「聞いたか?」
ジョンは悪意を込めてヘンリーを見つめた。

ヘンリーは特に指示されなくともジョンが何を言いたいのか理解すると、 「はい、すぐに契約を破棄してチャン・グループとの提携を解消するように通知します」

「頼むよ」
ジョンは満足げに頷き、手を退屈そうに振って二人がオフィスから出て行くように合図する。

ジェームズとヘンリーは、無事ライオンの巣から出られたことに感謝しながらホッと溜息をついた。

二人がオフィスから一歩足を踏み出すや否や、ジェームズは嬉しくなって自慢げに「ジョンおじさんは本当に俺をちゃんと扱ってくれるなあ」と嘯いた。

「俺のためにチャン・グループとの提携を解消してくれるって言うんだぜ」

感動的で心温まる話じゃあないか!

しかし、 ヘンリーは首を横に振って反論した。

「よく考えてくださいよ。だったらなぜ、あなたがイザベラにダシにされたと言ったときに提携を解消するように言わなかったんです?」

「何でだろう?」
ジェームズは混乱し、狼狽えた。

ヘンリーはいたずらっぽく笑い、「あなたのためじゃない。ニーナのためですよ」と心の中で考えていた。